大量のPDFをAIに読ませて、必要な箇所だけ引き抜く
契約書や報告書の束から特定の条件を探す作業を、AIでどこまで短縮できるか。渡し方の工夫と、そのまま信じてはいけない部分の見分け方を書きます。
PR: この記事にはアフィリエイトリンクが含まれます。リンク経由で商品・サービスが購入された場合、運営者が紹介料を受け取ることがあります。順位や評価は紹介料の有無によって操作していません。
顧客から「過去3年分の契約書、更新月がバラバラなので一覧にしてほしい」と頼まれたことがあります。PDFが40本。1本ずつ開いて該当箇所を探すと、丸一日は消えます。
こういう作業がAIで大きく変わりました。ただし「全部読ませて要約して」で済むほど単純でもない。実際にやるときの手順を書きます。
何が速くなって、何が速くならないか
速くなるのは探す作業です。40本のPDFから「自動更新条項がある契約」を抜き出す。この横断的な検索は、人間がやるといちばん時間を食い、AIがやるといちばん速い。
速くならないのは確認作業です。AIが「この5本に自動更新条項があります」と答えたとして、その5本が正しいかは自分で開いて見るしかない。
つまり作業が「探す+確認する」から「確認する」だけになる。40本を全部開くのが、5本を開くのに変わります。これが実際の効き方です。全部が消えるわけではありません。
渡し方で結果が変わる
一度に渡す量
長い文書をまとめて渡せるという意味ではClaudeが扱いやすい印象があります。数十ページのPDFを何本か同時に投げても、後半の内容を落としにくい。
ただし限界はあります。40本を一度に投げるのは無理があるので、10本ずつ4回に分ける、といった刻み方をします。刻んだ結果を最後に自分でまとめる。
質問の形
ここがいちばん結果を左右します。「要約して」と頼むと、当たり障りのない概要が返ってきて使い物になりません。
探しているものを具体的に書く。
添付した契約書それぞれについて、次を表にしてください。ファイル名、契約期間、更新方法(自動更新か否か)、解約通知の期限。記載が見つからない項目は「記載なし」と書いてください。推測で埋めないでください。
「推測で埋めないでください」を必ず入れる。 これがないと、AIは空欄を嫌って何かを書きます。もっともらしい日付が入り込むのがいちばん困る。
出典を出させる
「その情報は何ページの何条に書いてありますか」と併せて聞いておくと、確認が一気に楽になります。ページ番号があれば、確認は数秒で済む。なければ結局全部読むことになります。
そのまま信じてはいけないもの
私が確認を省かないと決めているのは、次の4つです。
日付。金額。当事者名。そして「記載がない」という判断。
前の3つは誤りが直接損害になるから。4つ目は、AIが見落としたのか本当にないのかを区別できないからです。「記載なし」と返ってきたときこそ、自分で開いて確認します。逆に「ここに書いてある」と言われた箇所は、指定ページを見れば数秒で済むので負担が軽い。
見つけたと言っているものより、見つからなかったと言っているもののほうが危ない。
スキャンした紙のPDFは別問題
文字情報を持たないPDF、つまり紙をスキャンしただけの画像は、そのままでは読めません。OCRを通す必要があります。
精度は原稿の状態に大きく左右されます。印刷が薄い、傾いている、手書きが混ざる。こうしたものは誤読が増えるので、重要な数字はOCR結果を信用せずに原本を見るという前提で扱うほうが安全です。
契約書のような文書は、そもそも元データがPDFで残っていることが多いので、スキャン画像しかない場合は先に原本の所在を確認したほうが早いこともあります。
蓄積するなら置き場所も決める
一度きりの作業なら都度渡せば済みますが、繰り返し参照するならNotionのような場所に整理して置くほうが結果的に楽です。毎回ファイルを渡す手間が消えます。
ただし、これは情報を外部サービスに置き続けるということでもあります。契約書や顧客資料をどこまで置いてよいかは、勤務先や取引先との合意によります。一度きりの読み込みと、恒久的な保管は別の判断が要る。
社外の資料を扱う前に
- 顧客から預かった資料をAIサービスに入力してよいか、契約上の制約を確認する
- 秘密保持契約がある場合、第三者提供にあたるかを確認する
- 入力内容が学習に使われる設定になっていないか、契約直後に一度見ておく
3つ目は見落としやすい。プランによって既定値が違います。
実際の時間の差
冒頭の契約書40本の件は、質問を組み立てるのに10分、10本ずつ4回投げて20分、返ってきた一覧のうち条項が見つかったものを開いて確認するのに30分ほどでした。合計1時間ちょっと。
丸一日を見込んでいたので、体感としてはかなり違います。ただし確認の30分は削れません。ここを削ると、間違った一覧を顧客に渡すことになります。
使い方を一つだけ選ぶなら
「探す」に使ってください。「判断する」には使わない。
どこに何が書いてあるかを見つけさせて、それが正しいかと、それをどう扱うかは自分で決める。この線を引いておくと、便利さの割に事故が起きません。
各サービスの料金・機能・規約は変更されます。利用前に公式サイトで最新の内容をご確認ください。
本記事は公開時点で確認できる公開情報をもとに構成しています。料金・仕様は変更される場合があるため、契約前に必ず各サービスの公式サイトで最新の内容をご確認ください。